大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和54年(ラ)153号 決定 1979年4月17日

抗告人 原田耕一

右代理人弁護士 藤原精吾

同 井藤誉志雄

同 前哲夫

同 佐伯雄三

主文

原決定を取消す。

理由

一  本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

一件記録によれば、抗告人は昭和五四年二月九日の本件入札期日において、一括して入札に付された三田市字屋敷町五八八番宅地三三七・一九平方メートル及び同所五八九番宅地四一六・〇〇平方メートルについて最高価二六八九万一〇〇〇円の入札をし、原裁判所は同月一五日の競落期日に抗告人に対し右二筆の宅地につき競落許可決定を言渡したこと、この競落許可決定に対しては同月二二日までの即時抗告期間内に何びとからも即時抗告の申立はされなかったこと、一方山本健治は昭和五四年二月二二日神戸地方裁判所伊丹支部から右二筆の宅地のうちの一筆である五八八番の宅地に対する競売手続を停止する旨の仮処分決定を得(同庁昭和五四年(ヨ)第三六号)、同日右仮処分決定正本を原裁判所に提出し、原裁判所は同年三月八日右五八八番の宅地に対する競落許可決定を取消し同土地に対する競落不許の決定をしたことが認められる。

ところで、競落許可決定の言渡後その確定前に競売手続停止の仮処分決定正本を競売裁判所に提出しても、すでに言渡された競落許可決定に対する不服申立期間(不変期間)の進行を停止する効力はなく、その確定を遮断するものではないと解するのが相当である。したがって、前記認定事実によれば本件競落許可決定は昭和五四年二月二二日の経過とともに確定したものといわなければならない。そして、いったん競落許可決定が確定した以上あらためてこれを取消すことは許されないものというべきであり、確定した競落許可決定の一部を取消した原決定は違法であって、取消を免れない。

なお、前記認定のとおり前記二筆の宅地は一括して入札に付されたのであるから、そのうちの一筆についてのみ競落を許し、他の一筆について競落を許さないとする取扱いは許されず、原決定はこの点においても違法である。

よって、本件抗告は理由があるから、原決定を取消すこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 川添萬夫 裁判官 吉田秀文 中川敏男)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例